ローマ亡き後の地中海世界(上) / 塩野七生
3分の1ほど読みました。
ローマ帝国の発展期頃の巻のようにどんどん読み進められないんですけど、それは、およそ10年ほどの年月がたって、私自身の老化が進んで本を読む集中力が続かなくなったことに加えて、中世前期の地中海世界の様相があまりにも渾沌…というか同じことの繰り返しなためだと思います。
ヒーローが現れて、ストーリーがどんどん展開していくようになるには、十字軍の遠征を待たなくてはいけないのか…。
にしても、
西ローマ帝国の消滅後のイタリア半島を防衛線とした戦いは、はっきりと、イスラム教 Vs キリスト教の構図で、国家対国家の戦いではありませんでした。
というのも当時、国家らしい国家がまだ確立していない時期で、イタリア半島は南はイスラム、北はいろんな「蛮族」に侵略されてる状態で、イスラム側としても、民族的にも一枚板ではなかったからです。
で、この上巻には、中世前期のイスラムからの攻撃が正規軍の進攻じゃなくて「海賊」の形をとった略奪から始まった様子が書いてあります。
皇帝や王様が命令して、自ら正規軍を指揮して行う戦争だけが戦争の姿じゃなくて、海賊というような民間が行う犯罪行為を含めた、広範囲な「テロ」も戦争の中で大きなシェアを占めているかもしれないということに、日本人の私たちはあまり気づいてないかも。
日本の近代の戦争を見る限り戦争は国と国が宣戦布告しあってからやるもののように思うけど、実際には、必ずしも特定の国家が指導しなくても、宗教のような、人々のまとまりを維持できるイデオロギーがあれば、戦争はできるということも、気をつけなかればいけないことだなーと思いました。
宗教は必ずしも厳密に宗教ではなくて、文化や民族のアイデンティティの置き換わったものかもしれなくて、教義や宗教指導者によってコントロールできるとは限らないのが難しいところ。
結局は、戦争というのは人間の支配欲の発露であって、神や体制は口実に過ぎないんでしょうね。。
いずれにしても、
最近、日本の自衛隊が、地球の裏側で「海賊」と交戦していいことにしようという案が出ていて、自国の商船を守るための警護は自衛隊の役割だとは思いますが、海賊が必ずしも民間の犯罪者かどうかは微妙なところなので、犯罪摘発→テロ討伐→正規の戦争というように、なし崩しに巻き込まれていく危険性もあるということを、覚悟しておいたほうがよいかも。
ノンポリな私にしてからが、さすがに気になる昨今の世界の安全保障であります。
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