幼い頃に病気で車いす生活になったマルガレーテ・シュタイフという女性が、あのテディベアとして知られるようになる熊のぬいぐるみで大成功するまでを描いた伝記です。子ども向けの本として書かれたみたいです。
身体障害で苦労した少女時代のことがページ数のほとんどをしめているんだけど、最後になって怒濤のように事業化→国際化→大成功していきます。
19世紀の後半の話ですから、熊やぞうのぬいぐるみなどという子どものおもちゃは、家庭で、主婦が、はぎれで作るのが当たり前だったのですが、それが商品として売れるようになったのは、産業革命が起き、現金収入のある中流家庭が増えていく時代の流れだったように思えます。
それから、くまのぬいぐるみくらい誰でも作れたはずですが、なぜマルガレーテ・シュタイフがそれを事業化できたかというと、
1,マルガレーテは身体障害があり結婚できる見込みがなかったので、自分の力で生涯、収入を得られる道を探す必要にかられていた。
2.兄弟が、当時の新素材フェルトの製造工場を作るようなベンチャー起業家であり、マルガレーテに素材を提供し、事業化をすすめ、海外へ販売ルートを展開するなどの手助けをした。
という2つの要因があったようです。
特に2の、兄弟や家族からの直接的支援があったことが、事業化には大きく役立ったと思われます。
それにプラスして、たまたまアメリカでルーズベルト大統領の逸話がもとで熊のぬいぐるみが流行した(参考:テディベア – Wikipedia)など、偶然の幸運に恵まれたということもあります。
でもそれ以上に、このプロセス全体が、当時のヨーロッパが個人消費の増大に向けて動き始めていたという、大きな時代の流れにうまく乗ったという印象があります。
新規ビジネスというのは、こんなふうに、自分が使えるアドバンテージを最大に生かして(素材が手に入るとか、海外に販売するルートを作れるとか)、その時点で世の中に流通していないものを作り、それを流行させることでしか、成功しないんじゃないかなと思います。
WEBの世界は栄枯盛衰がめまぐるしくて誰が勝ち組が分からないけど、facebookやtwitterだって、使えるアドバンテージ(創業者自身の技術やノウハウ)を生かして、その時点で世の中に流通していないサービスを作り、うまいことユーザーを取り込んでシェアを増やしてきました。
ルーズベルト大統領にあたる存在が、オバマ大統領をはじめとする有名人で(facebookもTwitterも、有名人が使っているということで人気が高まりました)
最初から国内ではなく世界で売ることを想定しているのもマルガレーテ・シュタイフと同じですね。
そして今の世界がWEBサービスというものにお金を消費してくれる時代になっていたならば…facebookもTwitterも大成功間違いないんでしょうが…そのへんが微妙かも。。
あと、1のような「生活のためにお金が必要だから」という状況が、ビジネスの成功を後押しするのも起業には大切なポイントです。
マルガレーテが健常者で、家庭の主婦だったとしたら、女だてらに従業員をやとって工場を経営するなど、言語道断、ダメ女の烙印を貼られたかもしれません。
マルガレーテの場合は、誰が見ても仕事をしないといけない状況だったので、周囲は足をひっぱるのではなく、進んで手助けをした、ということもあると思います。
100年以上たった現在でも同じで、お金が必要だから起業する、というのは万人に分かりやすく、受け入れてもらいやすい状況なので、支援してくれる人も見つかりやすいでしょう。同じ仕事を頼むなら、経済的に安定してて、片手間にやっている主婦やサラリーマンの副業の人より、その仕事に生活がかかっている人のほうが、ちゃんとやってくれそうで安心です。
まあ、能力と人物次第ではありますが…。
…というわけで、経済的な困窮は、起業の追い風と言えるでしょう。
今日は、子ども向けの伝記を読んでベンチャー企業のノウハウを学んだ、というお話しでした。いじょ!
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