【読書】 日本辺境論/内田 樹



アマゾンのリンク画像には写ってないんですが、赤い派手な帯のキャッチコピーがすべてを言い尽くしております。
「日本人とは何ものか?鍵は「辺境」にあり!これ以降、私たちの日本人論は、本書抜きでは語られないだろう。」

内田樹<ruby>うちだたつる</ruby>先生はブログで時々経済論をぶつこともありますが出身は文学部。専門はフランス現代思想ということですが、日本や世界へのあくなき興味と関心から、さまざまなジャンルを横断するような切り口で物事を語るので、読み物として面白いです。

本書でご自身が触れていましたが、内田先生の本が読み物として面白いのは、意図して読み手に伝わるような日本語で書いているというのもひとつの要因です。これに関しては後述するとして…。

内容ですが、日本人に「辺境人」という表現をあてはめたとき、見事に説明できる私たちのメンタリティに、思わず納得。
・つねに「きょろきょろ」と中央の動向を気にする私たち
・中央が先端で自分たちはいつも遅れているという意識
・追いつくのは好きだけど、トップに躍り出て世界を先導するなんて無理って思う気持ち
などなど。
それらをすべて「有史以来、辺境に生きてきたから」ということで説明できちゃうって、すごい。

その上で、内田先生の主張は「だから欧米なみに中央をめざせ」ではなくて「辺境人らしさを貫いて生き残れ」です。

ジャック・アタリの「21世紀の歴史」の予言(?)のように、世界の中心がアジアに戻ってくる(※ジャック・アタリの論では、世界の中心は中東・ヨーロッパのあたりから始まったことになっていたような気がしますが、中国方面でも同時進行で世界の中心を作っていたと思えば、あっちから来たものがこっちに戻った、という見方もできましょう)

としたら、もしかして「日本経由?」と思ったけど、やっぱりそれはありえない、というエントリーを先日書いたばかりの私としては、

「日本辺境論」における
「辺境であることこそが日本らしさなのだから、万が一、日本が世界の中心になるなんてことになったら、そこはすでに日本とは言えない」だから「日本人は世界の中心になることを選択しない」という説に

「やっぱりか!」

…とよく分からない納得の仕方をしたのでありました。
理由はともかく、ニッポンが世界のクリエイターを引きつけて、新しいもの(産業・文化・価値感)をどんどん生み出すなんて、誰も思えないでしょう?
TOKYOが世界都市になってそこで一番になるよりは、今、活気がある国へ行って一旗揚げたほうが楽しそうって、能力のある人はみんな、思ってるんじゃないかな?

なんか出て行きたくなっちゃう国。それがニッポン。かも。

おっと、本の内容からかなり逸脱して、自分の妄想に走ってしまいました。
本書の後段では、
・学ぶとはどういうメカニズムか
・日本語の特異性
なども語られていて、おもしろいです。

日本語は、真名と仮名、大和言葉と漢語、男言葉女言葉、という感じで2種類の「言葉と表記」を共存させている言語だから、本来の言語である大和言葉を浸食されることなく、外来語を漢語としてどんどん取り込むことができ、その結果、あらゆる学問を、日本語だけでなんとか語れる環境ができている。

そのような日本語の機能に助けられて、日本人は外国の知識や技術をどんどん吸収し、中央に併合されることなく、辺境人のまましたたかに生き残ってこられた。

というわけで、漢語・大和言葉ハイブリッドな日本語って、超便利〜♪ って話。

この、大和言葉の存在については、あまり意識してない人が多いと思うけど、私は中学校教師になったときに、そのことに気がつきました。

「こいつら、漢語で話しても、伝わらない!」

たとえば、
×「この書類は明日提出ね」
○「この紙は明日持ってきてね」

書類ではなく紙、提出ではなく持ってきて、です。
伝わりやすさだけでなく、与える印象も違います。

漢字の単語が増えれば増えるほど、冷たく威圧的で強制的な感じがするけど、逆だと暖かい感じになります。
高圧的にしかりつけるときは漢語で、そうでないときは大和言葉で、親密さを醸し出します。

とにかく、無駄なストレスを生まずに意思疎通を図りたいときは、彼らの分かる言葉=生まれた時から使っている身体に染みついた言葉=ひらがなで書いても分かる種類の言葉で、話をするのが最適でした。

書き言葉でも同様です。
私の文章がいまだに、ひらがなが多くて、表現が正確さに欠けるのも、当時の癖が残ってるせいだと思います。大人向けの文章(指導案とか)だと、あえてすべての単語を漢字の熟語にしないと、体裁が整いませんでした。

でも指導案なんて、教育実習以外ではほとんど書きませんからね。。

というわけで、この本を読んで、日本語の持つ奥行きもよく分かりましたし、逆に、外国語に翻訳されたいならば、あえて日本語らしくない文章を書かなくては、ということも理解できた気がしますし、この本、とても良かったです。

オススメです。

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