【読書】嘘つきアーニャの真っ赤な真実/米原 万里 メルヘンのようなエッセイ。笑って泣いてちょっと哀しい。強引に人に読ませたくなるすてきなエッセイ。

Amazonの★5つの評価をどれだけ読んでも「でもきっとアンネの日記みたいな暗い話なんだろうな」とか思って紙の書籍ではなくKindle版を購入した私。東欧に対してどんだけ暗いイメージがすり込まれていたのやら。
だって、紛争や虐殺、難民の話は読みたい気分じゃなかったんですよー。

でも予想は外れて、というか★5つの評価の通りで、そんな暗い話じゃなくて、軽い笑いとノスタルジーと謎解きみたいなどきどき感で一気に読める、すてきなエッセイでした。

読んだイメージとしては、アンネの日記みたいじゃなくて(当たり前ですが)、「点子ちゃんとアントン」「飛ぶ教室」「飛ぶ教室」みたいな…あれ?違うかな、よくわかんないけど、昔読んだ古い子ども向けの本みたいな感じなんです。うまく説明できないけど多分、文章にそういう昔の少年少女本の翻訳みたいなテイストが漂っているのではないかと…。なにしろ著者はロシア語の同時通訳・翻訳者なので(って理由になってるようななってないような)

とにかくですね、
読了からまる3日くらいたつけど、心の中にずーっと、ヨーロッパを転々としながら暮らす、多国籍な人たちの姿が浮かんでは消え、消えては浮かんでいます。

この本に出てくる人たちはみんな、国籍と、生まれた場所と、育った場所と、今いる場所が、ぜんぜんバラバラで、自分は何人かというアイデンティティーの持ち方が、あまりにも各人各様。
国籍と民族(あるいは宗教)も、日本国籍=日本人、みたいにイコールではなくて、○○国籍の○○人、というように非常に複雑ですし、そこにユダヤが混じるとさらに話はややこしく、ほんと、大陸の暮らしというのは、たいへんなのね…と思ったことです。

私が、この本を他人事ではなく感じたのは、多分、子ども時代の米原さんのおかれた状況が、転校続きでいつでもどこでも「よそもの」状態だった私の子ども時代とオーバーラップしたためなんだけど、この本に出てくる人たちは、そんなものの比ではないくらいのノマドっぷりで、なんか
「どこにいても自分の居場所じゃないような気がして」
なんてめそめそしていた自分がアホらしくなるくらいでした。

国から国へ流れ歩いて、その場所で強引に暮らしていくわけですもんね。
言葉だって、もう力任せにしゃべってしまう感じで。
たくましいです。

いつも当然のように「私は日本人」と思って日本語で話し、日本語で考え、日本食を食して暮らしていける私たちって、ほんとに恵まれてるんだなって、初めて気がついたことです。

これを買って後悔してるのはこの一点。

Kindleじゃなくて紙の本で買えばよかった。
そしたら、強引に人に貸して「これすごくいいから!読んでみて!」って勧められたのに(>_<)

ってことです。みなさん、騙されたと思って読んでみてー。

この本を読み終わると同時に、他のエッセイもつぎつぎに読んでいますが、著者はもう鬼籍には入られて、新作は出ないということでまったく残念しごく。

コメント

  1. […] すが。 最近では、英会話教室でさまざまな国籍の先生に出会ったり、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読んだりして、ヨーロッパの国々の現状や歴史について、ちょっと興味を持っ […]

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